法人化は慎重に検討すべき理由 個人事業主が一度法人化すると元に戻るのが大変な本当の話

ビジネス

「そろそろ法人化した方がいいかな?」
そう考えている個人事業主の方は少なくないでしょう。しかし、一度法人化してしまうと、簡単には個人事業主に戻れないことをご存知ですか?

この記事では、法人化のメリット・デメリットを含め、法人化した後に個人に戻る際の大変さ判断を誤らないための基準について、財務のプロの視点から解説します。

法人化とは?基本と目的

個人事業主が法人化する理由として、よくあるのは次のようなものです。

  • 信用力の向上(取引先・金融機関への印象)
  • 節税メリット(所得が高くなるほど個人より法人が有利)
  • 社会保険加入による将来的な安心
  • 融資や設備投資のしやすさ

特に「所得が年間900万円を超えると法人化を考えるべき」と言われがちですが、これは一つの目安であり、絶対的な基準ではありません

法人化の主なメリット

  • 節税効果:役員報酬や生命保険などを活用した所得分散が可能
  • 信用力:株式会社という肩書きが与える対外的な安心感
  • 経費処理の幅が広い:退職金制度や福利厚生費なども計上可能

これだけ見ると「早く法人にした方が得」と思えますが、落とし穴も多数あります

法人化の重大なデメリット

1. 社会保険の負担が重い

法人になると、原則として役員・社員を社会保険に加入させなければなりません。これは会社負担分を含めると給料の約15%にもなり、想像以上に重いコストです。

2. 毎年の維持費が高い

  • 赤字でも「均等割り」として7万円ほどの法人住民税が発生
  • 法人税申告は専門知識が必要で、税理士費用が高額
  • 登記・定款・各種手続きに初期費用が30万円前後かかる

3. お金の自由が制限される

法人のお金=会社のお金です。個人事業のように自由に使えず、使途を明確にしないと税務上問題になることも

法人から個人事業主に戻すのは超大変

「じゃあ、もし合わなかったら個人事業に戻せばいい」と安易に考えるのは危険です。

戻すためには以下の手続きが必要です:

  • 会社の解散届の提出
  • 解散時の確定申告
  • 生産処理(資産・負債の精算)
  • 借入金があれば完済しないと基本的に戻れない

借金が残っていれば個人に引き継ぐ契約を銀行と交わす必要があり、それすらできない場合は「戻る」という選択肢自体が消えます。

特に苦しいのはこのパターン

  • 社会保険や固定費がきつくて資金繰りが悪化
  • 赤字続きで法人維持が困難
  • 解散費用すら払えず、身動きが取れない

こうなると「倒産」一歩手前で、本来の自由な働き方どころではなくなります

それでも法人化するなら慎重に

法人化の判断は、以下のような基準を満たしてからがおすすめです。

  • 所得(※売上ではない)が安定して年間1,000万円以上ある
  • 数年連続して好調で将来的な成長見込みが高い
  • 法人化後のコスト計算と経営体制が明確に整っている

早すぎる法人化は「税金よりも社会保険が痛い」という現実に直面し、多くの人が後悔しています。

マイクロ法人という選択肢も

最近は、社会保険対策としてマイクロ法人を作るケースも増えています。

  • 最低限の役員報酬(月8万円程度)
  • 社会保険に安く加入可能
  • 個人事業と法人を併用し、リスク分散

マイクロ法人は節税・社会保険対策目的の小規模法人なので、無理に「法人→個人へ戻す」ような負担も少なく、戦略的な選択肢のひとつです。

FAQ

Q1: 所得が900万円を超えたらすぐ法人化すべきですか?
A1: いいえ。最低でも1,000万円以上の所得が数年続いてから検討すべきです。

Q2: 法人化しても、あとで個人事業主に戻れますか?
A2: 戻れなくはありませんが、解散手続きや借金の処理、税務対応などハードルが非常に高く、現実的には困難です。

Q3: 法人化の最大のデメリットは何ですか?
A3: 社会保険の会社負担と、毎年の固定コスト(税金・申告費用)が非常に重い点です。

まとめ

法人化には大きなメリットがある一方で、維持費や手続きの煩雑さ、資金繰り悪化のリスクも抱えています。特に、一度法人にしてしまうと、簡単には個人事業主に戻れないという事実は、多くの人が見落としがちです。

重要なのは、「法人化はゴールではなく、あくまで手段」であること。焦らず、事業の成長に見合ったタイミングで、冷静に判断しましょう。

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