日本を代表するアーティスト・宇多田ヒカルが新曲「Mine or Yours」で言及した“選択的夫婦別姓”の歌詞が波紋を呼んでいます。これまでにも社会問題への発言が注目されてきた宇多田氏ですが、今回は“家族のかたち”という極めてセンシティブなテーマに踏み込んだことで、議論が巻き起こっています。
新曲「Mine or Yours」に含まれる問題の歌詞とは?
5月2日に配信リリースされた「Mine or Yours」は、綾鷹のCMソングとして制作され、音楽番組「THE FIRST TAKE」での披露とともに多くの注目を集めました。しかし、話題となっているのはそのメロディーや映像ではなく、以下の一節です。
令和何年になったらこの国で
夫婦別姓OKされるんだろう
この一文は、明確に“選択的夫婦別姓”の法制化を訴える内容であり、あくまで一個人の価値観とはいえ、多くの視聴者に違和感や反発を抱かせました。
SNSで炎上、賛否分かれる声
歌詞の内容に対し、SNS上では次のような意見が見られます。
- 「政治的主張を歌に込めるべきではない」
- 「家族の一体感を壊すメッセージが不快」
- 「これまでの宇多田ヒカルのイメージと違う」
一方で、一部には「夫婦別姓を可視化してくれた」という声もありますが、公共性の高いCM楽曲にまで問題提起を盛り込む姿勢には「歌を聴いて現実逃避したい人には重すぎる」との指摘もあります。
夫婦別姓は「選択」ではなく「分断」では?
夫婦別姓の導入がなぜここまで慎重に扱われるのか――それは、単なる“名前の自由”の話ではないからです。
- 家族の一体感や絆の象徴が「姓」である
- 子どもの姓をどうするのか、家庭内で新たな分断が生まれる
- 戸籍制度の根本的な見直しが必要となり、社会全体への影響が大きい
こうした懸念が現実として存在しており、「夫婦別姓=進歩的」という単純な構図には当てはまりません。
実際、2024年の調査でも「夫婦別姓に違和感を覚える」と回答した人が一定数おり、特に子育て世代や高齢層を中心に反対意見が根強くあります。宇多田氏のように自身のライフスタイルに基づいた発言は理解できますが、それを歌詞という形で“社会のあるべき姿”として提示するのは、アーティストの影響力を考えると慎重であるべきです。
問題は「夫婦別姓がないこと」ではなく、「家族観の多様化」とどう向き合うか
現在の法律では、結婚時にどちらかの姓を選択することが可能です。現実として、夫の姓に統一される例が多いとはいえ、それは合意によって成立しているものです。制度としての“選択肢”はすでに存在しており、「別姓でなければ多様性がない」というのは誤解を招く表現です。
また、夫婦別姓を望む人々が事実婚という形を選び、社会的に認知されている例も増えてきています。制度の拙速な導入よりも、社会の理解と合意形成を重ねることこそが本来の筋道でしょう。
アーティストの発言は「文化」か「扇動」か
宇多田ヒカルのような国民的アーティストが社会問題を発信すること自体は否定されるべきではありません。しかし、その内容が一方の主張に偏るものであれば、ファン層や公共の場での受容には限界があります。特にCMソングなど、不特定多数が耳にする場では慎重なバランス感覚が求められます。
まとめ
宇多田ヒカルの新曲「Mine or Yours」は、美しいメロディーの裏側に、家族制度を揺るがすセンシティブなメッセージが含まれていました。選択的夫婦別姓という制度は、ただの「自由の拡張」ではなく、「家族の一体感」や「社会的安定性」にも深く関わる問題です。
議論は必要ですが、それが公共性の高い音楽に乗って一方的に発信されることは、慎重に考えるべきではないでしょうか。

