この記事では、「食品の消費税を0%にすれば生活が楽になる」という一見魅力的な主張の裏に隠されたリスクと、そもそも消費税の本質について詳しく解説します。特に飲食店や小規模事業者が抱える厳しい現実を通して、「悪税」とも言われる消費税の仕組みを初心者でも理解できるように解説します。
食品消費税0%は本当に庶民の味方なのか?
選挙のたびに話題になる「消費税の軽減措置」や「食品の消費税を0%にする」という政策。2025年現在も、この議論が加熱していますが、実際には大きな落とし穴が存在します。
特に食品に限定して消費税をゼロにする政策は、飲食店や農家などの事業者にとって「増税」となり得るのです。
その理由は以下のとおりです:
- インボイス制度との関係で、課税経費が非課税経費に変わる
- 仕入れコストが綺麗に8%下がる保証がない
- 価格に消費税分を転嫁できない事業者が多数存在
- 結果として、赤字企業でも納税義務が発生する
このような仕組みは、現場を知らない政策立案者や会計理論だけで議論する専門家には見えづらい構造です。
消費税は「預かり金」ではない?誤解される仕組み
多くの人が「消費税はお客さんから預かって、後で国に納めるだけ」と思っていますが、これは大きな誤解です。
実際には、消費税は売上高に対して課税される「事業者の税金」です。仕入れ時に支払った消費税(仕入控除)を差し引いて、納税額を計算します。
ポイント整理
- 消費税は事業者が負担している
- 売上から一部の経費を差し引いた分に課税(付加価値税)
- 経費のうち、インボイスのない経費(例:正社員の人件費)は控除できない
- 結果、正社員を雇うほど「課税対象」が増える
つまり、正社員を雇うと増税になる構造があるのです。これが「非正規雇用の拡大」や「賃上げできない」現状の根本原因のひとつになっています。
なぜ飲食店が「食品の消費税0%」で潰れるのか?
多くの人が「食品の消費税がなくなれば、飲食業界も助かるはず」と考えがちです。しかし、現実は逆です。
理由1:仕入れが非課税になっても販売は課税のまま
- 現在:食材の仕入れには消費税がかかり、それを経費として控除可能
- 消費税0%後:仕入れが非課税になるため、控除対象から外れる
その結果、「仕入れコストは少ししか下がらない」のに「納税額は増える」事態になります。
理由2:価格は下がらない
スーパーや飲食店では、価格は心理的に設定されるため、「98円が88円になる」などの素直な価格調整はほぼ不可能です。
実際、値付け担当者が「10円安くなるから88円にしよう」とは判断しません。価格に反映されない消費税0%の政策は、表面上だけで終わる可能性が高いのです。
FAQ
Q1: 食品の消費税が0%になると家計は助かるのでは?
A1: 一部の人には恩恵があるかもしれませんが、仕入れコストが下がらない場合が多く、価格が変わらないことがほとんどです。
Q2: 消費税はお客さんから預かっているだけでは?
A2: 実際には事業者の売上高に課税されており、価格転嫁できない事業者は自腹で納税しています。
Q3: なぜ赤字企業でも消費税を払う必要があるのですか?
A3: 消費税は「売上」に対して課税されるため、利益の有無に関係なく納税義務が発生します。
まとめ
「食品の消費税0%」という政策は、庶民の味方のように見えて、実は事業者にとって増税となる可能性が高い非常に危険な策です。消費税の仕組みを正しく理解しないまま議論されることは、社会全体にとってもリスクを伴います。
本当に暮らしを良くしたいのであれば、「消費税全体の本質的見直し」こそが必要です。

