ビジネスの成功には「価格設定」が重要な要素となります。しかし、多くの企業や個人事業主は「安く売ればたくさん売れる」と考えがちです。
しかし、安売りは本当に良い戦略なのでしょうか?
この記事では、年商100億円の経営者・小川忠洋氏の考えをもとに、なぜ安売りでは成長しないのか、そして価格設定が企業の成長を左右する理由について詳しく解説します。
価格を10%上げるだけで利益は劇的に変わる
まず、売上と利益の関係を正しく理解することが重要です。多くの人が「売上が10%増えれば、利益も10%増える」と思っていますが、実際はそうではありません。
例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
- 年間売上:1億円
- 利益率:20%(利益2,000万円)
- 価格を10%上げる → 年間売上1.1億円
この場合、増えた1,000万円の売上の大部分が利益となります。なぜなら、固定費(家賃・人件費・広告費など)は変わらず、そのまま利益に直結するからです。結果として、利益は3,000万円になり、1.5倍に増加します。
逆に、10%値下げすると利益は半減する可能性が高く、事業に大きなダメージを与えることになります。
なぜ安売りは経営を苦しめるのか?
1. コストが増え、利益が減る
安く売れば、当然ながら利益率が下がります。その結果、大量に売らなければ利益を確保できません。
例えば、1億円の売上を目指す場合:
- 1,000円の商品を売る → 10万個必要
- 10万円の商品を売る → 1,000個でOK
1,000円の商品を10万個売るためには、大規模なサポート体制や物流が必要になり、人件費や管理コストが増えてしまいます。結果的に、利益を確保するのが難しくなるのです。
2. 質の低い顧客が集まりやすい
安い商品は、価格のみに魅力を感じる顧客を引き寄せます。こういった顧客は:
- クレームが多い
- リピートしない
- ブランド価値を理解していない
例えば、100円や500円の商品を購入した顧客ほどクレームを入れてくる傾向があると言われています。
一方、高額商品を購入する顧客は、サービスの価値を理解し、長期的な関係を築きやすいのです。
3. 安売りはピンチに弱い
安売りで成長しようとすると、経済危機や市場の変化に対応できません。
例えば、コロナ禍では「安い商品」を扱う企業ほど苦境に立たされました。
一方、高級ブランドや高価格帯のビジネスは、比較的ダメージを受けにくかったのです。
実際に成功した企業の価格戦略
1. ユニクロ vs. GU
ユニクロとGUの戦略を比較すると、価格設定の重要性がよくわかります。
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ユニクロ
- 利益率:約19.6%
- 売上:国内2.6兆円、海外5,000億円
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GU(ジーユー)
- 利益率:約10.9%
- 売上:約900億円
GUは低価格路線ですが、売上・利益率ともにユニクロには及びません。ユニクロは「機能性・ブランド価値」を強化し、高価格でも売れる戦略を採用しているため、安定した成長を続けています。
2. マクドナルドの100円マック
かつてマクドナルドは100円マックを導入しましたが、結果的に業績を悪化させました。
現在は価格を上げつつ、ブランド価値を高める方向へシフトしています。
3. ディズニー・USJ
ディズニーやUSJは、価格を上げながらもファンを獲得し続けています。
「値上げしても満足度が高ければ、顧客は離れない」ことを示す好例です。
高価格でも売れるために必要なこと
1. 商品・サービスの価値を高める
価格を上げるだけでは意味がありません。顧客が納得する「価値」が必要です。
例えば:
- 高品質な素材を使う
- 独自性のあるサービスを提供する
- 付加価値(保証・特典・サポートなど)をつける
2. 価値を正しく伝える
多くの企業は、商品・サービスの価値を伝えきれていません。
「なぜこの価格なのか?」をしっかり説明することが重要です。
マーケティング・ブランディングを強化し、価値を理解してもらいましょう。
3. 数よりも質を重視する
「安くしてたくさん売る」よりも、「高く売って質の良い顧客を獲得する」ことが大切です。
例えば、10万円の商品を100人に売るのと、1,000円の商品を1万人に売るのでは、後者の方が圧倒的に管理コストがかかります。
まとめ
安売りは一見、売上を伸ばす方法のように思えますが、利益率を下げ、経営を苦しめる原因となります。
特に、小規模なビジネスほど「高く売る戦略」が必要です。
重要なポイント:
- 価格を10%上げるだけで、利益は1.5倍以上になることが多い
- 安売りは「コスト増」「質の低い顧客」「経営の不安定化」を招く
- 成功している企業は、価格設定とブランディングに力を入れている
- 価値を高め、それを適切に伝えることが価格戦略の鍵
あなたのビジネスでも、価格戦略を見直し、利益を最大化する方法を考えてみてはいかがでしょうか?