パートタイムやアルバイトで働く人にとって、「103万円の壁」は長年の課題でした。しかし、2023年にこの壁の撤廃が議論され、国民民主党の働きかけによって引き上げが現実味を帯びています。しかし、この動きに対して「税収減」を懸念する声も多く、一部では「日本財政が破綻するのでは?」という意見もあります。
本記事では、この103万円の壁撤廃の背景や政府が恐れる本当の理由について解説します。
103万円の壁とは?なぜ問題視されてきたのか
103万円の壁の仕組み
日本では、パートやアルバイトの給与が年間103万円を超えると、所得税がかかる仕組みになっています。このため、多くの人が「103万円以下」に収めるように労働時間を調整し、働きすぎないようにする現象が起きています。
なぜ撤廃・引き上げが必要なのか?
- 最低賃金の上昇に対応できていない
30年前に比べて最低賃金は約1.7倍に上がりましたが、103万円の壁は一切動いていません。結果として、労働者が働きすぎないように抑えざるを得ない状況が続いていました。 - 人手不足の解消
壁があることで「これ以上働くと損をする」という心理が働き、労働供給が制限されます。特に飲食業や小売業では、年末などの繁忙期に人手が不足しやすくなっています。 - 実質的な減税効果
103万円の壁が130万円や150万円に引き上げられれば、より多くの人が**「働きやすくなる=収入が増える」**というメリットがあります。
政府や財務省が恐れる本当の理由
政府や財務省は「103万円の壁を引き上げると税収が減る」と主張しています。特に地方税への影響を懸念する声があり、「給食がなくなる」「ゴミ収集ができなくなる」などの極端な主張をする議員や学者もいます。しかし、本当にそうなのでしょうか?
1. 「税収減=財政危機」は本当か?
現在、政府の税収は過去最高を更新し続けています。それにもかかわらず、公共サービスの向上は見られず、むしろ削減されることが多いです。つまり、「税収が減るとサービスが維持できない」という論理には矛盾があるのです。
2. 財政は単年度ではなく長期で考えるべき
政府や財務省は「103万円の壁を撤廃すると単年度の税収が減る」と言います。しかし、経済は長期的に見るべきです。
- 壁を引き上げることで人々がより多く働けるようになれば、消費が増え、企業の売上が上がる
- 企業の利益が増えれば法人税収が増える
- 労働市場が活性化し、結果的に所得税収も増える可能性がある
単年度の税収減を理由に政策を止めるのは、経済全体の成長を阻害する可能性があるのです。
3. 「税収減」よりも「財政民主主義」の崩壊が怖い
財務省が本当に恐れているのは、「財政のコントロールを失うこと」かもしれません。
日本の財政政策は、長年にわたって「緊縮路線」が続いており、財務省が「増税」を推し進める主導権を握っています。
もし減税が当たり前になれば、「政府の支出は増やせる」という認識が広まり、MMT(現代貨幣理論)のような考え方が主流になる可能性があります。これは、財務省が最も避けたいシナリオなのです。
「103万円の壁撤廃」で財政破綻はあり得るのか?
日本政府はよく「将来世代にツケを回さない」といった言葉を使います。しかし、日本の借金(国債)は国内の金融機関が保有しており、財政破綻する可能性は極めて低いと考えられています。
むしろ、長年のデフレと緊縮財政が続いたことで、経済の停滞や少子化を招いてきたのです。
実際に、103万円の壁を引き上げたからといって、
✅ 日本の経済が急激に悪化するわけではない
✅ 税収がゼロになるわけでもない
✅ インフレが急激に進むわけでもない
むしろ、消費が活性化し、日本全体の経済が良くなる可能性すらあります。
まとめ
103万円の壁撤廃の本当の意味
- 労働者がより自由に働ける環境を作る
- 消費の拡大を促し、経済成長につなげる
- 税収が減るという短期的な視点ではなく、長期的な経済効果を見るべき
政府や財務省は「税収が減る」として撤廃に慎重ですが、本質的な問題は「財政規律の維持」ではなく、「経済全体をどう成長させるか」にあります。
103万円の壁撤廃は、日本の経済政策が変わるきっかけになるかもしれません。今後の議論に注目していきましょう。

