「何度も説明したのに伝わらない」「どうして相手に理解してもらえないの?」そんな経験はありませんか?
仕事や家庭、友人関係など、あらゆる場面で「伝わらない」という問題が発生します。実は、この原因は「相手の理解力が足りない」わけではなく、「心の違い」にあるのです。
この記事では、今井むつみさんの著書『何回説明しても伝わらないはなぜ起こるのか?』の内容をもとに、認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策を紹介します。
伝わらない原因は「スキーマ」の違いにある
私たちはそれぞれ異なる経験を持ち、それによって「スキーマ(思い込みや先入観)」が形成されます。
スキーマとは?
スキーマとは、過去の経験から無意識に作られる「頭の中のルール」のことです。例えば:
- 「カレー」と聞いて甘口を思い浮かべる人もいれば、辛口やインドカレーを想像する人もいる
- 「丁寧な仕事」と言われたとき、書類をきれいに整えることを思い浮かべる人もいれば、細かい部分までチェックすることを想像する人もいる
このように、同じ言葉でも人によって受け取り方が違うため、伝わらない原因になります。
スキーマの違いを乗り越えるには?
- 自分のスキーマに気づく
- 無意識の思い込みがあることを自覚する
- 相手のスキーマを理解する努力をする
- 相手の経験や価値観を考え、それに合わせた説明をする
例えば、親に「クリエイティブな仕事をしたい」と言ったとき、親が不安を感じるのは「安定した仕事が一番だ」というスキーマがあるからです。この場合、「今はクリエイティブな仕事でも安定した収入が得られる」と説明すると、相手の理解が深まるかもしれません。
伝えるときは「理由」を添えると効果的
何かを伝えるとき、つい結論だけを言ってしまいがちですが、「理由を添える」だけで相手の納得感が変わります。
理由を伝えると承諾率が上がる
ハーバード大学の実験では、コピー機の順番を譲ってもらうときの成功率が次のように変化しました。
- 理由なし:「先にコピーを取らせてください」 → 60%が承諾
- 理由あり:「急いでいるので先にコピーを取らせてください」 → 94%が承諾
- 意味のない理由:「コピーを取らないといけないので先にコピーを取らせてください」 → 93%が承諾
この結果から、「人は理由があると納得しやすい」ことがわかります。
日常での活用例
- 仕事での指示
「この資料をチェックしておいて」ではなく、「この資料をチェックしておかないと後でトラブルになるから」と理由をつける - 友人を誘うとき
「週末遊ぼう」ではなく、「最近ストレスが溜まってるからリフレッシュしたい、一緒に遊びたい」と理由を添える - デートの誘い
「ご飯に行かない?」より「一緒にいると楽しいから、ご飯に行かない?」の方が効果的
「なぜ必要なのか?」を伝えるだけで、相手の納得感が増し、行動を促しやすくなります。
「聞く耳を持つ」ことで信頼関係が深まる
コミュニケーションでは「話す」だけでなく「聞くこと」も重要です。
しっかり聞くことの効果
- 信頼関係が深まる
人は自分の話を真剣に聞いてくれる相手に安心感を覚える - 新しい視点が得られる
相手の考えを知ることで、新たなアイデアや気づきを得られる
聞くときのポイント
- ただ相槌を打つのではなく、相手の感情に寄り添う
- 「うん、そうなんだ」だけではなく、「それは大変だったね」と気持ちを汲み取る
- 聞きたくない話こそ、冷静に受け止める
- 部下からの失敗報告を受けたとき、「なんで失敗したんだ!」ではなく、「報告してくれてありがとう」とまず感謝する
特に、上司やリーダーの立場にいる人は、相手の話をしっかり聞くことで、職場の雰囲気やチームの成長につながります。
まとめ
- 伝わらない原因はスキーマの違い
- 過去の経験から形成される思い込みが、人によって異なるため、同じ言葉でも受け取り方が違う
- 相手のスキーマを理解することで、伝え方が変わる
- 理由を伝えると相手が納得しやすい
- 「これをやっておいて」ではなく、「○○だからやってほしい」と理由を添える
- 心理学的にも、理由があるだけで承諾率が上がる
- 相手の話をしっかり聞くことが大切
- ただ相槌を打つのではなく、相手の感情に寄り添う
- 聞きたくない話こそ、冷静に受け止める
伝えるだけでなく、相手を理解し、聞くことができれば、コミュニケーションは格段にスムーズになります!
ぜひ、今日から実践してみてください。

