最近、SNSや広告でもよく見かける中国発の格安通販サイト「TEMU(テム)」や「SHEIN(シーイン)」。
あまりの安さに「なんでこんなに安いの?」と疑問に思ったことはありませんか?
実はこの価格破壊の裏には、日本の消費税や関税のルールに関わる“ある仕組み”が大きく関係しているのです。
この記事ではそのカラクリを初心者にも分かりやすく解説していきます。
TEMUやSHEINはなぜこんなに安い?価格破壊の裏にある3つの仕組み
1. 中間業者を排除した直送システム
TEMUやSHEINでは、商品を作った工場から直接、消費者へ発送しています。
仲介業者を通さないことでコストを最小限に抑えられるのです。
2. 国際送料の一部を日本が負担している!?
発展途上国から先進国への国際郵便は、受け取り側の国が送料の一部を負担するルールがあります。
そのため、中国から送られてくる商品は、日本国内の配送よりも送料が安いケースすらあるのです。
3. 消費税・関税が“免除”される特例ルール
最も重要なのが、「デミニミスルール(少額免税制度)」と呼ばれる税制の存在です。
- 1万円以下の輸入品は、消費税も関税も基本的にゼロ
- 日本国内で同じ商品を買えば、10%の消費税が上乗せ
これが、日本企業が価格競争で不利になる最大の原因となっています。
たとえば同じ1,000円の商品でも――
| 購入先 | 消費税 | 関税 | 合計価格 |
|---|---|---|---|
| 日本の企業 | 約100円 | なし | 1,100円 |
| TEMUなど海外通販 | 0円 | 0円 | 1,000円 |
単純に見ても、常に10%安いというインパクトがあります。
日本企業が不利になる構造、そして税収面での課題
この制度は、元々「小額の輸入には手間がかかる割に税収が少ない」という合理的な理由から作られました。
しかし今では、小額輸入が爆発的に増加しており、日本国内の事業者が大きな不利益を被っています。
実際のデータ(財務省発表)
- 令和元年:約3,000万件の小額輸入
- 令和6年:約1億7,000万件
- 輸入全体の9割が1万円以下の貨物
しかも、それらの大半がTEMUやSHEINのような激安通販経由と見られています。
これにより:
- 消費税収が入らない
- 国内企業が価格競争で敗北
- 税関の検査負担が増え、薬物・偽ブランド品の流入リスクも上昇
という複数の問題が指摘されています。
世界各国はすでに規制強化、日本も検討段階に
アメリカの対応
- トランプ政権時代に「中国製は免税対象外」と明言
- 1ドルでも関税をかける制度に変更
EUの対応
- 2021年から、すべての輸入品にVAT(付加価値税)を課税
- 少額でも免税ナシ
日本も動き出す兆し
日本でもようやく、デミニミスルールの見直しが財務省主導で検討されています。
現時点ではまだ方針段階ですが、将来的には1万円以下の商品にも消費税がかかる可能性があります。
※ただし、「旅行者の免税制度」とは異なる制度なので、個人の海外旅行者への影響はありません。
FAQ
Q1: TEMUやSHEINの価格が安いのはなぜ?
A1: 中間業者の排除に加え、日本での消費税・関税が免除されているためです。
Q2: 1万円以下の商品には本当に税金がかからないの?
A2: 現在の制度では、消費税・関税ともに免除されています。
Q3: これから消費税がかかるようになるんですか?
A3: 財務省が制度の見直しを検討していますが、今すぐ変更されるわけではありません。
Q4: 日本企業はどう対応すればいいの?
A4: 税制の公平化が進めば、価格面での競争力が戻る可能性があります。
まとめ
TEMUやSHEINといった中国発の格安通販が驚くほど安いのは、日本の税制によって“免税特権”が与えられているからです。
この制度は本来、合理的な目的で作られたものですが、EC時代の到来により国内企業との価格競争を著しく歪めているという問題が浮き彫りになっています。
将来的には制度変更が予想されますが、現時点ではまだ消費税も関税も免除された状態が続いているため、消費者は恩恵を受けている一方で、国内事業者は厳しい競争に晒されています。
知っておくべきなのは、この価格差が“単なる企業努力”ではなく“制度によるもの”であるという事実です。

