海外で売られる日本産米は日本国内より安い!なぜ?価格逆転の裏にある国の政策と補助金の真実

政治・経済学

近年、海外で販売されている日本産のお米が、日本国内よりも安く購入できるという逆転現象が話題になっています。「輸送費や関税がかかっているのに、なぜそんなに安いのか?」と疑問に思う人も多いでしょう。

本記事では、この価格逆転の背景にある国の制度・補助金・消費税制度の仕組みを解説し、今後の食料政策についても考察します。

海外で日本産米が安く売られる3つの理由

1. 過去の契約価格で取引されている

日本から輸出される米は、輸出時点よりも前に契約されることが一般的です。たとえば、2024年初頭の相場が安かった場合、その価格で契約が締結されていれば、2025年に高騰しても安い価格のままで海外に出荷されます。

そのため、今の国内価格と比べると、大きな価格差が生まれる要因になります。

2. 輸出向けの米には多額の補助金が支給されている

米の輸出を促進するために、以下のような国や地方自治体による補助金制度が設けられています。

  • 米新市場開拓促進事業:1反あたり最大4万円
  • 産地交付金:1反あたり最大3万円程度(条件付き)

これらの補助によって、生産者のコストが大きく軽減され、安価での輸出が可能になります。

3. 消費税の「完納」制度による実質的な還元

日本では、輸出商品に対しては消費税が免税扱いとなるため、輸出企業は仕入れ時に支払った消費税分を税務署から還付(完納)してもらえます。

つまり、輸出することで消費税分のコストが実質ゼロになるため、その分だけ販売価格を下げる余地が生まれるというわけです。

補助金と国際ルールの関係

農業分野においては、WTO(世界貿易機関)のルールで「輸出に限定した補助金」は基本的に禁止されています。しかし、現在の日本では、輸出用米に対しても広く適用されている補助金制度が存在しています。

政府の見解では、「輸出だけでなく、加工用・飼料用・新規需要米などにも適用している」という理由から問題はないとされていますが、国際的な目線ではグレーゾーンとされる可能性もあります

なぜ国内では米価が高騰しているのか?

生産調整政策により田んぼが減少している

長年にわたって行われてきた「生産調整(減反政策)」によって、日本国内の田んぼの面積は大幅に減少しています。国の予算を使って、農家に主食用米の生産を控えさせる仕組みが続けられており、結果として米の供給量が足りず、価格が上昇しています。

米の供給不足と輸出の継続で価格がさらに上昇

国内で米が不足しているにもかかわらず、輸出は継続されており、供給が追いつかなくなったことで価格が倍増するという異常な状況が発生しています。

本当に必要なのは「輸出の停止」ではなく「増産」

根本的な解決策は、単に輸出を止めることではありません。日本には、まだ1000万トン以上の米を生産できるだけの能力と土地があります。現在の制度を見直して、農家が自由に米を増産できる環境を整えることこそが、最も現実的で効果的な対応策です。

余剰米は輸出や米粉へ転用可能

消費量を超えて生産された米は、輸出や米粉として活用することで無駄をなくし、日本の食料自給率向上にも寄与します。

農家への個別補償で価格の安定と生活支援を両立

現在の生産調整や備蓄のための予算を見直し、農家に対する直接補助(個別補償)へとシフトすることで、米価を下げながらも生産者を支える仕組みを実現できます。

FAQ

Q1: なぜ日本の米が海外で安く買えるのですか?
A1: 過去の契約価格、補助金制度、消費税の還付などが組み合わさって、安価に販売できる仕組みになっています。

Q2: 補助金は違法ではないのですか?
A2: 国内法では合法ですが、国際貿易のルールに照らすと議論の余地があります。

Q3: 日本での米不足はなぜ起きているのですか?
A3: 長年の減反政策で田んぼが減り、米の供給量自体が不足しているためです。

Q4: 解決策はありますか?
A4: 生産調整をやめて米の増産を促進し、余った米は輸出や米粉として有効活用する体制が求められます。

まとめ

海外で日本産米が安く売られる背景には、政策的な価格決定、補助金制度、消費税還付の仕組みといった複数の要素が複雑に絡んでいます。一方で、国内では減反政策によって生産量が減り、価格が高騰するという矛盾した状況が続いています。

これからの食料政策には、短期的な価格調整ではなく、安定した生産体制と持続可能な農業支援が不可欠です。食は国の安全保障の根幹です。農業と向き合い、持続可能な未来を考えることが、今こそ求められています。

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