この記事では、エティエンヌ・ド・ラ・ボエシの名著『自発的隷従論』を通して、なぜ人々が自ら進んで支配されてしまうのか、そしてその支配構造から脱出するためのヒントをわかりやすく紹介します。
自発的隷従とは何か？私たちが無意識に支配に従う理由
「自発的隷従」とは、人々が権力者に強制されてではなく、自ら進んで従ってしまう状態を指します。ボエシはこの現象を500年前に指摘し、支配構造の核心に迫りました。
たとえば、私たちは生活が苦しくなっても、「仕方がない」と諦めたり、権力に従うことを当然のように受け入れてしまうことがあります。それは一種の“習慣”であり、長年にわたって繰り返されることで「当たり前」になってしまっているのです。
支配を支えているのは民衆自身
ボエシは、どんな独裁者であっても、その権力を支えているのは「従ってしまう民衆」であると述べています。そして、民衆が「支えるのをやめるだけ」で、支配体制は崩壊すると主張します。
これは、「立ち向かう」のではなく「距離を置く」ことで自由を取り戻すという非暴力的な思想であり、後のガンジーの「非服従運動」とも共通します。
無気力になる理由は「慣れ」と「操作」
支配に対して無抵抗になる理由の一つは、「慣れ」です。ボエシは、「冷従を繰り返すことは、毒に慣れることと同じだ」と言います。
さらに、支配者は民衆を無気力にするためにさまざまな“戦略”を使っています。動画では以下の5つが紹介されています。
権力者が使う5つの支配テクニック
- 娯楽で骨抜きにする
酒・ギャンブル・見世物などを使って思考を停止させる。 - 食料やお金の分配で恩を売る
税金で奪っておいて、少し戻すことで“施し”のように見せる。 - 称号で印象操作
「庶民の味方」という肩書きで支配の正当性を演出。 - 神格化で異議を封じる
自分を神のように演出し、異論を許さない空気を作る。 - 宗教心を利用する
奇跡や伝説で人々を信じ込ませ、疑問を抱かせない。
これらは現代社会でも形を変えて存在しています。支配されていることに気づきにくいのは、こうした巧妙な仕組みがあるからです。
少数者が社会を支配できる理由
一見、多数の民衆がいるにもかかわらず、なぜ一部の少数者が支配できるのでしょうか？ボエシはそれを「利権ネットワーク」と「分断」として説明します。
- 権力者 → 側近 → 地方の管理者 → 一般民衆
このピラミッド構造によって支配は強化され、利害関係によって人々は黙認しがちになります。
また、民衆が団結できないようにすることで、支配者は「まとまった少数」が「分断された多数」を制御できる構造を保ちます。
FAQ
Q1: 自発的隷従論は現代でも通用する考え方ですか？
A1: はい。SNSの言論統制や生活への圧力など、現代社会でも形を変えて同様の支配構造が見られます。
Q2: 自発的隷従から抜け出すにはどうすればいい？
A2: まず「慣れ」や「習慣」を疑い、距離を置くことです。そして、自分の意思で選択し続ける「理性」を育むことが大切です。
Q3: 権力に反抗すると危険では？
A3: ボエシの主張は「反抗する」のではなく「支えるのをやめる」ことです。無理に闘う必要はありません。
まとめ
『自発的隷従論』は、「なぜ私たちは従ってしまうのか？」という本質的な問いを投げかけます。
そして、その答えは意外にも「自分たちが支えてしまっている」という厳しくも希望のある指摘です。
- 自由を奪うのは他人ではなく、自分自身の“習慣”
- 従わなければ支配は崩れる
- 少数が勝つのは、多数が分断されているから
一人ひとりが「支配に加担しない」という選択をすること。
それが自由を取り戻す第一歩なのかもしれません。
