2025年度の税制改正により、「160万円の壁」が新たに設けられました。これは、年収200万円未満の人の基礎控除引き上げが高級的に行われる一方、200万円以上の所得層では2年間限定の減税措置となるものです。
本記事では、「160万円の壁」とは何か、実際にどのような影響があるのかをわかりやすく解説します。
160万円の壁とは?
これまで、年収103万円や130万円の壁が問題視されてきました。これらは、一定の年収を超えると税負担や社会保険料負担が一気に増えるため、働く時間を制限する要因になっていました。
今回の「160万円の壁」は、所得税の基礎控除を引き上げることで、減税効果を持たせることが目的です。
具体的には、以下のような内容となっています。
- 基礎控除額の引き上げ(対象者:年収200万円未満の人)
- これまでの103万円の壁が160万円に引き上げられ、低所得者層に恩恵がある。
- この措置は高級的に適用される。
- 2年間限定の基礎控除拡大(対象者:年収200万円~850万円の人)
- 所得税・住民税の基礎控除が拡大されるが、2027年度以降は元に戻る予定。
- 実質的に、一時的な減税にとどまる。
減税の効果はどれくらい?
政府の試算によると、今回の税制改正による減税規模は約1.2兆円とされています。しかし、これは本来国民民主党が主張していた基礎控除75万円の引き上げと比べると、減税規模が1/6程度にとどまることになります。
また、減税が一時的なものにとどまるため、消費拡大の効果が薄いと考えられます。
160万円の壁の影響
1. 実際の手取りは増えるのか?
- 年収200万円未満の人 → 手取りは増える
- 103万円の壁が160万円に引き上げられることで、パートやアルバイトの人がより長時間働いても手取りが減らないようになります。
- 年収200万円以上の人 → 2年間は手取りが増えるが、その後は減る
- 2025年と2026年は所得税の基礎控除が拡大され、減税の恩恵を受けられる。
- しかし、2027年以降は元に戻るため、手取りが減る可能性がある。
2. 消費の活性化にはつながらない?
経済学的には、「一時的な減税」は貯蓄に回りやすく、消費拡大にはつながりにくいとされています。
特に、今回の160万円の壁の恩恵を受ける層の7割以上がシニア世帯であることが指摘されており、現役世代の消費には大きな影響を与えない可能性があります。
今後の課題と対策
1. さらなる「壁」の解消が必要
「160万円の壁」は、一部の人にとって負担軽減につながるものの、住民税の基礎控除は10万円しか引き上げられないため、110万円の新たな壁が生じる可能性があります。
また、2027年以降は減税がなくなるため、長期的な労働意欲の向上にはつながりにくい点も問題です。
2. 物価高の影響を考慮した減税政策が求められる
現在の物価高を考慮すると、所得税の基礎控除を引き上げるだけではなく、消費税の減税や社会保険料の負担軽減など、より広範囲な対策が求められます。
まとめ
- 「160万円の壁」とは?
- 年収200万円未満の人の基礎控除引き上げ(高級減税)
- 200万円以上の人には2年間限定の減税措置
- 減税効果は限定的
- 一時的な減税は消費拡大につながりにくい
- 現役世代よりもシニア層に恩恵が大きい
- 今後の課題
- 新たな「110万円の壁」が生じる可能性
- 長期的な減税政策が必要
今回の「160万円の壁」導入は、働く人の負担軽減につながる面もありますが、抜本的な解決策にはなっていません。今後も「壁」の問題が議論されることになりそうです。

