この記事では、中野剛志著『政策の哲学』から「日本は財政破綻しない」と言われる理由や、プライマリーバランス(PB)黒字化を目指す政策の問題点について解説します。また、貨幣の本質や積極財政への課題についても掘り下げていきます。財務省や主流派経済学が支持する理論の背景を考え直し、国家政策に必要な視点を探ります。
自国通貨を発行する国は財政破綻しない?
財政破綻とは何か?
財政破綻とは、政府が債務を返済できず、国としての信用を失う状況を指します。ただし、自国通貨を発行できる日本のような国では、政府が通貨を供給する能力を持つため、理論上、債務不履行(デフォルト)に陥ることはありません。これはアメリカやイギリスと同様の仕組みです。
なぜインフレが焦点となるのか?
財政破綻ではなく、重要なのは財政出動によるインフレの管理です。政府が過剰に貨幣を供給すれば物価が上昇しますが、適切な範囲であれば問題ありません。逆に、デフレ下での財政均衡主義は経済を停滞させる可能性が高いのです。
プライマリーバランス黒字化は正しいのか?
プライマリーバランスの意味
プライマリーバランス(PB)は、国債費用を除いた歳入と歳出の差を指します。財務省は、PB黒字化を目標に掲げていますが、この方針が経済成長を妨げているとの批判があります。
なぜPB黒字化に固執するのか?
PB黒字化を重視する理由の一つは、「将来世代への負担を減らす」という考えです。しかし、政府の支出は同時に民間の所得となり、経済活動を支える役割を果たします。必要な支出を削れば、短期的にも長期的にも国民生活に悪影響を及ぼす可能性があります。
財政均衡主義の問題点
PB黒字化を目指す政策の背景には、主流派経済学の影響があります。この理論は数式化され、科学的に見えるために支持されていますが、その前提には「現実の人間行動や社会構造を無視した仮定」が多く含まれています。このような理論が政策に影響を与えることで、非現実的な方針が採用されてしまうのです。
貨幣の本質:貨幣は負債である
貨幣の起源
貨幣とは、負債を記録する仕組みとして生まれました。例えば、銀行が企業にお金を貸し出す際、預金という形で新たな貨幣が生まれます。同様に、政府が中央銀行からお金を借りて支出することも貨幣の供給に当たります。
財政と貨幣の関係
政府が財政出動を行うと、貨幣が増え、国民の手元に渡ります。税金を徴収するのは、貨幣を回収してインフレを抑制するためであり、「税収を財源にして支出を行う」というイメージは誤りです。自国通貨を発行する政府にとって、貨幣の供給はその本質的な役割の一つです。
日本が積極財政に踏み切れない理由
主流派経済学の影響
日本が積極財政に踏み切れない背景には、主流派経済学の影響があります。この理論は、財政赤字や政府債務の削減を優先する傾向にありますが、貨幣や経済活動の実態を十分に反映していません。
名目と実態の乖離
プライマリーバランス黒字化のような目標が「ルール」として定着してしまうと、その目的が優先され、経済全体への影響が軽視されます。このような状況では、政策が現実に即したものになることは困難です。
FAQ
Q1: 日本はなぜ財政破綻しないのですか?
A1: 自国通貨を発行できる日本では、政府が通貨を供給する能力があるため、理論上、債務不履行にはなりません。ただし、インフレを適切に管理する必要があります。
Q2: プライマリーバランス黒字化を目指すべきではないのですか?
A2: PB黒字化を目標にすると、必要な支出が削られ、経済停滞を引き起こすリスクがあります。重要なのは、国民経済への影響を基準に財政政策を運用することです。
Q3: 貨幣が負債であるとはどういう意味ですか?
A3: 貨幣は負債として生まれます。例えば、政府が中央銀行からお金を借りて支出することで貨幣が供給されます。この仕組みによって、貨幣と債務が経済活動を支える基盤となります。
まとめ
日本が財政破綻しない理由は、自国通貨を発行する仕組みにあります。財政政策の目標は、国民生活への影響を基準にすべきであり、プライマリーバランス黒字化に固執することは非現実的です。また、貨幣の本質を理解することは、正しい経済政策を考える上で不可欠です。今後も哲学的な視点を取り入れた議論が求められます。

