安宅和人氏のベストセラー「イシューからはじめよ」は、ビジネスパーソンが限られた時間とエネルギーを最大限に活用するための思考法を提供します。本書の核となるのは、仕事の生産性を劇的に向上させる「イシュー（課題）」を見極めるスキルです。この記事では、本書の内容を徹底解説し、具体的な実践方法や注意点についても詳しく説明します。
1. イシューとは何か？
イシューの定義
イシューとは、「本当に取り組むべきテーマや課題」のことです。安宅氏は、「問題を解く力よりも、どの問題を解くかを見極める力が重要だ」と強調しています。これは、仕事やプロジェクトの成果を左右する最も重要なポイントです。
仕事の成果を決定する2つの要素
仕事の成果は以下の2つの要素によって決まります：
- イシューの質（どれだけ良い課題を設定できるか）
- 答えの質（その課題に対する解決策の完成度）
どれだけ素晴らしい答えを出しても、そもそものイシューが間違っていれば意味がありません。
2. 良いイシューを設定する方法
良いイシューの条件
- スタンスが明確であること
イシューには白黒がつけられる具体性と仮説が必要です。例えば、「この製品を改良すべきか否か」というように、行動に繋がる問いを設定します。 - 常識を否定していること
常識的すぎるイシューは、行動を変化させることができません。既存の枠組みにとらわれず、新しい視点で課題を設定することが重要です。
良いイシューの例
ビールブランドの売り上げが低迷している場合：
- 悪いイシュー：「ブランド力を上げるにはどうするべきか？」（常識的すぎる）
- 良いイシュー：「高齢者をターゲットにしたブランドイメージに切り替えるにはどうするべきか？」
3. 良いイシューを見つけるための情報収集
一次情報の重要性
良いイシューを設定するためには、一次情報を収集することが不可欠です。一次情報とは、自分が直接体験した生のデータや現場の声を指します。これにより、他人の偏見や編集が排除された純粋な仮説が立てられます。
具体例
- ものづくり：工場の現場で働く人の声を聞く。
- 販売：実際の顧客が何を求めているか調査する。
4. ダメなイシューの特徴と注意点
ダメなイシューの条件
- スタンスが曖昧
具体的な行動に繋がらないため、結果的に大量の無駄な情報収集や分析が必要になる。 - 常識的すぎる
「何をどうするか」が自明で、答えが分かりきっている課題はイシューとは言えません。
ダメなイシューの例
- 「ブランド力を上げるべきか？」（答えは常に「はい」であり、行動変化が生まれない）
5. イシューから始める実践方法
ステップ1: イシューを言語化する
イシューを明確な言葉にすることで、常に意識し続けられるようにします。紙に書いたりデジタルツールを活用するのも有効です。
ステップ2: 上司や同僚と議論する
チーム全体でイシューを共有することで、方向性を一致させます。議論の中でイシューの質がさらに磨かれることもあります。
ステップ3: 常にイシューを意識する
調査やプレゼンといった具体的な作業を進めるうちに、イシューがぼやけることがあります。定期的にイシューを見直し、軸をぶらさないようにすることが大切です。
6. 実際の事例：ビールブランドの売上低迷問題
シナリオ
あなたがビールメーカーの企画部に所属し、「ブランドの売上を伸ばせ」と言われたとします。
悪いイシューの例
「ブランドイメージを若者向けにリニューアルするにはどうすればいいか？」
- この課題設定では、表面的な解決策しか出せず、本質的な売上改善には繋がりません。
良いイシューの例
「国内のビール市場が縮小する中で、高齢者をターゲットに売上を伸ばす方法は何か？」
- 市場規模や顧客ターゲットを深掘りした課題設定により、より実効性のある解決策が生まれます。
7. イシューを忘れない工夫
調査や分析に没頭していると、そもそものイシューを見失うことがあります。そのため、以下のような工夫を取り入れると良いでしょう。
- 紙に書き出して目につく場所に置く
- 定期的にイシューをレビューする日を設定する
まとめ: イシューを制する者が成果を制する
本書の要点
- イシューを設定することが最優先
- 良いイシューはスタンスが明確で、常識を否定している
- 一次情報を基に課題を設定する
- イシューを常に意識し、忘れない工夫をする
「イシューからはじめよ」は、仕事の質を根本から変える方法を教えてくれる一冊です。ぜひ日々の業務でイシューを意識し、成果を最大化する思考法を実践してみてください。
