近年、新卒採用をめぐる「入社前逃亡」が企業の頭を悩ませています。特に2025年4月入社予定の学生たちの中には、退職代行サービスを利用して入社前に内定辞退するケースが急増しており、企業にとっては大きな課題となっています。
この記事では、退職代行を通じた内定辞退の実態と背景、企業・学生それぞれの視点から考えられる影響と対策について詳しく解説します。
退職代行を使った入社前辞退が増加中
最近の報告によると、退職代行サービス「モームリ」では、2025年4月初旬の依頼のうち約4分の1が新卒内定者の辞退という事例もありました。これは、入社日を目前に控えたタイミングでの辞退が、より簡単に行えるようになったことを示しています。
なぜ退職代行が使われるのか?
- 本人が辞退の意志を伝えるのがつらい
- 直接話すと引き止められるのが怖い
- 精神的負担を減らしたい
こうした理由から、退職代行を通じて内定辞退する新卒が増加しています。もはや「入社=決定事項」ではなく、最終判断をギリギリまで保留する傾向が強まっているのです。
企業にとっての影響は?現場の人事担当者の声
企業側では、このような突然の内定辞退に対して怒りや困惑の声が多く上がっています。特に以下のような影響が出ています。
内定辞退による採用計画の狂い
あるIT企業では、採用目標400名に対し、内定を1000人に出してようやく目標を満たすという、非効率な状況に陥っています。これは、辞退者を前提とした過剰な内定出しが常態化していることを意味します。
「内定辞退は裏切り」という感情的な反応も
調剤薬局の人事担当者である矢島さんは、「事実無根の噂で辞退された」と語り、企業側が一方的に不利な立場に置かれるケースもあるといいます。
入社前日や前週のキャンセル
最も深刻なのは、入社前日に退職代行を使って連絡が来るケースです。準備していた研修や配属計画が一瞬で無駄になるため、企業は笑うしかないほどのショックを受けることもあります。
若者が入社前逃亡を選ぶ背景とは?
退職代行の利用はあくまでも手段であり、その背後には以下のような心理的・社会的な要因があります。
1. フィーリングが合わないと感じた
「企業のノリが合わない」といった、直感的な違和感が辞退理由となることが増えています。これは若者が職場環境や文化を重視している証です。
2. 高待遇の企業への乗り換え
入社前に別の企業から魅力的なオファーを受けた場合、迷わず乗り換える学生も多くいます。売り手市場が続いている現在では、こうした行動も珍しくなくなっています。
3. ネットの評判を重視する傾向
SNSや口コミサイトで企業のネガティブな情報を目にすると、不安を感じて辞退に至るケースも多くあります。ネット情報が判断基準となっているのです。
企業がとるべき対策とは?
このような現象が今後も続くと予想される中で、企業が実施すべき対策には以下のようなものがあります。
1. 内定者フォローの強化
- 定期的な面談・交流イベント
- 社員との懇親会やOB訪問の導入
- 入社後のキャリアパスの説明会
2. 働きやすさのアピール
福利厚生や職場環境の整備を実施し、明確に打ち出すことが重要です。リモートワークやフレックス制度も魅力の一つです。
3. ネガティブ情報のモニタリングと対応
SNSや口コミサイトでの企業評価を定期的にチェックし、必要に応じて社内改善や説明を行う姿勢も求められます。
FAQ
Q1: 新卒が退職代行を使って辞退するのは非常識?
A1: 非常識と見る向きもありますが、本人にとっては精神的に苦しい決断であり、選択肢の一つとなっています。ただし、信頼関係を築く努力も重要です。
Q2: 企業は辞退を防げるの?
A2: 完全には防げませんが、内定者フォローや企業文化の発信を通じて、辞退のリスクを下げることは可能です。
Q3: 退職代行を使って辞退したら今後に響く?
A3: 通常、法的な問題は発生しませんが、業界によっては悪い印象を持たれることもあるため、慎重な判断が求められます。
まとめ
2025年卒の新卒採用において、「入社前逃亡」や「退職代行を使った内定辞退」が新たな課題として浮上しています。これは若者の価値観の変化や、テクノロジーによる情報共有がもたらした新しい現象です。
企業はこうした現実を受け止め、柔軟な対応と丁寧なフォローを重ねることが必要です。そして学生側も、自分のキャリアを見つめ直し、しっかりと情報収集と企業研究を行った上で納得できる選択をすることが大切です。