この記事では「食料品の消費税ゼロ政策」の意外な落とし穴について解説します。安藤裕税理士が語る、飲食店や中小事業者が直面する危機の実態をわかりやすくまとめました。
食料品の消費税ゼロ政策は本当に国民に優しいのか?
一見、「食料品の消費税をゼロにする」という政策は、家計に優しく、弱者救済にもつながる理想的な政策のように思えます。しかし実際には、その裏に飲食店や中小企業の“倒産リスク”が潜んでいるのです。
なぜなら、現在の消費税制度と「インボイス制度」の仕組みの中では、食料品の消費税だけをゼロにすることで、仕入れにかかる消費税の控除ができなくなり、結果的に“増税”になる場合があるからです。
つまり、
消費税ゼロ=減税とは限らず、むしろ逆効果になることもあるというわけです。
飲食店が苦しむ仕組みをわかりやすく解説
飲食店の経費の多くは「人件費」や「家賃」などの非課税仕入れに該当し、これらは消費税の控除対象になりません。そのため、すでに消費税の“納税負担”が重くのしかかっています。
ここで食料品の消費税がゼロになると、食材の仕入れが「非課税」扱いとなり、仕入れ時に支払っていた消費税分が控除できなくなります。つまり、その分を“自腹”で納税しなければならなくなるのです。
安藤氏は、こうした構造が特に中小の飲食業に深刻な打撃を与えると警鐘を鳴らしています。
実際の計算例(簡略化)
- 仕入れ食材:100万円(課税対象 → 控除可)
- → 食料品消費税ゼロにすると → 非課税(控除不可)
- 結果:利益が出ていなくても、消費税を“追加で”支払う必要が発生
なぜここまで誤解されているのか?
「食料品の価格が8%下がる」と思っている人が多いのは、消費税が単純に上乗せされていると思い込んでいるためです。しかし実際には、食料品の価格は「需給」によって決まっており、税率が下がっても価格が下がるとは限りません。
特に生鮮食品は「時価」で取引されるため、消費税ゼロにしても値段は変わらない可能性が高いのです。
結果として、「価格は下がらず」「飲食店は負担増」になりかねません。
FAQ
Q1: 食料品の消費税ゼロにすれば生活は楽になるのでは?
A1: 一部の家庭にはメリットがありますが、飲食店など事業者への負担が増えるため、経済全体には悪影響が出る可能性があります。
Q2: なぜ飲食店が特に影響を受けるのですか?
A2: 食材が非課税になることで、仕入れ時に払った消費税が控除できず、納税負担が実質的に増加するためです。
Q3: 消費税をなくしても税収は大丈夫なの?
A3: 安藤氏によれば、消費税を廃止しても企業利益が増え、法人税や所得税収が増えることでカバーできる可能性があるとのことです。
まとめ
「食料品の消費税ゼロ」は、見た目には魅力的な政策ですが、実際には中小事業者や飲食店に大きなダメージを与える危険性をはらんでいます。
単に「安くなるから良い」と考えるのではなく、制度の仕組みを理解したうえで議論することが重要です。
特に、インボイス制度と消費税の仕組みを知ることは、これからの日本経済を考えるうえで欠かせない知識となるでしょう。