「哲学は難しい」「抽象的で理解しにくい」と感じる方も多いのではないでしょうか?
そんな日本人に向けて書かれたのが、ジェイソン・モーガン氏と茂木誠氏による『日本人が学ぶべき西洋哲学入門』です。本書では、西洋哲学の基本的な概念と、日本人の思考との違いを分かりやすく解説しています。
この記事では、本書の要点や注目すべきポイントを紹介し、西洋哲学がどのように社会に影響を与えてきたのかを探っていきます。
なぜ日本人に哲学がなじみにくいのか?
狩猟採集民族としての日本人の思考
本書では、「日本人は世界で最も喋らない民族であり、身振り手振りも少ない」と指摘されています。
これは、日本人が長い縄文時代を通じて狩猟採集民族としての特性を磨いてきたことが関係しているとのこと。
- 森の中で生活する狩猟民族は、静かにして獲物の気配を察知することが重要。
- 逆に、遊牧民や農耕民族は、異なる言語を持つ他者とコミュニケーションを取る必要があった。
このため、日本人は直感や感性(右脳)が優位になり、西洋のように論理的思考(左脳)を重視する文化が発達しなかったと説明されています。
西洋哲学の発展と日本との違い
西洋哲学は、ユーラシア大陸の文化的背景のもとで発展してきました。
特に、西洋では「理性」を重視し、論理的に物事を考える傾向が強くなります。
一方、日本では「空気を読む」文化があり、言葉にしなくても相手の意図を察することが重要視されます。
この違いが、日本人が哲学を難しく感じる要因の一つになっているのです。
西洋哲学の出発点:古代ギリシャ哲学
哲学の語源とは?
本書では、「哲学(フィロソフィー)」の語源について説明されています。
フィロソフィー(Philosophy)は、「フィロ(愛する)」+「ソフィア(知恵)」を組み合わせた言葉です。
つまり、哲学とは「知恵を愛すること」を意味します。
哲学が誕生した背景には、詩人たちが神話を通じて世界を説明しようとするのに対し、
哲学者たちは「神話ではなく、人間の理性によって世界を理解しよう」としたことがあります。
イオニア学派と哲学の原点
本書では、古代ギリシャの哲学者たちの思想が紹介されています。
- デモクリトス:「すべてのものは原子(アトム)でできている」と考えた唯物論者。
- ピタゴラス:「世界は数学的な秩序で成り立っている」と主張。
- プラトン:「理想的な世界(イデア)があり、現実世界はその影にすぎない」と考えた。
- アリストテレス:「現実世界の分析を重視し、経験的な知識を重んじた」。
この中で、プラトンの「理想を基準にして現実を変える考え方」と、アリストテレスの「現実から出発する考え方」が対立するものとして紹介されています。
アリストテレスの思想は、のちに「保守思想」の基盤となり、プラトンの思想は「社会主義やマルクス主義」につながっていきます。
西洋哲学が生み出した「近代の病」とは?
マルクス主義との関係
本書では、西洋哲学の流れの中で「完璧な社会」を求める思想が危険であると述べられています。
特に、マルクス主義は「理想的な社会を作るために現実を変えようとする」哲学であり、
その影響で、多くの国で大量虐殺や独裁政治が生まれたと指摘されています。
- スターリン(ソ連)
- 毛沢東(中国)
- ポル・ポト(カンボジア)
彼らは「理想の社会を作る」という大義名分のもと、数千万人の人々を犠牲にしてきました。
このように、西洋哲学が生み出した「理想主義」が、現実社会で大きな問題を引き起こしてきたのです。
全体主義を支える「官僚的思考」
本書では、ナチスのアイヒマンの例を引き合いに出し、
「全体主義を支えるのは、思想を持たず命令に従う官僚型の人間である」と述べています。
これは、現在の日本社会や世界情勢にも当てはまり、
「単に命令に従うことが、人々を無意識のうちに悪に加担させる」と警鐘を鳴らしています。
FAQ(よくある質問)
Q1. 本書はどんな人におすすめですか?
A1. 哲学に興味があるが難しく感じている人、日本と西洋の思考の違いを学びたい人におすすめです。
Q2. 本書ではどんな哲学者が紹介されていますか?
A2. ソクラテス、プラトン、アリストテレス、デモクリトス、ピタゴラス、ライプニッツなどが登場します。
Q3. 本書の主張する「西洋の病」とは何ですか?
A3. 理想社会を求めすぎるあまり、現実を否定し、全体主義や独裁政治につながってしまう考え方のことです。
まとめ
『日本人が学ぶべき西洋哲学入門』は、西洋哲学の基本から現代社会への影響までを分かりやすく解説した一冊です。
特に、日本人と西洋人の思考の違いや、西洋哲学が抱える「理想主義の危険性」について深く掘り下げています。
「哲学は難しそう」と敬遠していた方も、本書を通じて新しい視点を得られることでしょう。

