モンペルラン協会(モンペルラン・ソサエティ)の誕生:歴史の転換点
1947年4月1日、スイスのモンペルランにあるホテルに、世界中のエリート経済学者39名が招待された。この会合は単なる学術的な議論ではなく、世界の経済政策に影響を与える「秘密組織」の誕生の瞬間だった。彼らは モンペルラン協会 を設立し、以後70年以上にわたり、各国の政府や経済界に絶大な影響力を持つこととなる。
モンペルラン協会の会員や関係者は、世界各国の 政府高官、財界の重鎮、著名な学者、ジャーナリスト など多岐にわたる。そのネットワークの規模は、現在では1000名を超え、政策決定の中枢にまで入り込んでいる。
では、彼らはどのようにして 世界経済のルールを作り、0.1%の富裕層に富を集中させたのか? その秘密を紐解いていこう。
モンペルラン協会の目的とは?新自由主義の拡大戦略
モンペルラン協会の目的は、 「新自由主義」の思想を世界中に広めること にあった。
新自由主義とは?
- 小さな政府 :政府の介入を減らし、民間の自由競争を促進
- 規制緩和 :企業活動の制約を減らし、市場の自己調整能力を重視
- 民営化 :公共サービスを民間企業に移し、政府の役割を縮小
- 労働市場の自由化 :労働組合の影響力を弱め、企業側の裁量を拡大
この政策により、企業や富裕層は莫大な利益を得る一方で、 労働者や中間層の生活はますます厳しくなる という問題が生じた。
彼らは 「自由市場こそが経済を成長させる」 という理論を掲げ、世界の政治家や経済界に影響を及ぼした。しかし、それは本当に公平な経済政策だったのだろうか?
モンペルラン協会の戦略:権力者ネットワークの構築
モンペルラン協会がここまで強大な力を持つようになった理由の一つは、 シンクタンク の活用である。
シンクタンクを通じた影響力の拡大
シンクタンクとは、政府や企業に政策提言を行う研究機関のこと。モンペルラン協会は 世界各地にシンクタンクを設立 し、政治家や財界人と交流の場を持つことで、新自由主義政策を浸透させていった。
具体例
- アメリカ :ヘリテージ財団、ケイトー研究所
- イギリス :アダム・スミス研究所
- 日本 :経済同友会、財務省の官僚ネットワーク
こうした組織を通じて、新自由主義の思想を学んだ若手政治家や経済学者が、各国で要職に就くようになった。
レーガン・サッチャー政権との連携
モンペルラン協会が決定的に影響力を持つようになったのは、 1970年代後半のレーガン・サッチャー政権 との連携である。
- イギリス :サッチャー政権が推進した「小さな政府」政策(国営企業の民営化、労働組合の解体)
- アメリカ :レーガン政権の「レーガノミクス」(減税、規制緩和、軍事支出の拡大)
この二つの政権の政策が、世界中の政治モデルとなり、 新自由主義が標準的な経済政策 として確立された。
モンペルラン協会がもたらした世界の変化
モンペルラン協会の影響により、世界経済は大きく変化した。しかし、それが全ての人々にとって良い結果をもたらしたわけではない。
1. 貧富の格差の拡大
- アメリカでは、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、ウォーレン・バフェットの3人の資産が、国民の下位50%の資産を上回る
- 中間層の衰退、貧困層の拡大が深刻化
2. 労働環境の悪化
- 規制緩和により、 非正規雇用が急増し、賃金は低下
- 労働組合の解体 により、労働者の権利が弱体化
3. 日本経済への影響
- 1990年代以降、日本でも新自由主義政策が本格化
- 竹中平蔵氏の改革(労働市場の自由化、郵政民営化)が影響
- 企業の利益は拡大したが、賃金は30年間ほぼ横ばい
トランプの再選と「反モンペルラン」の動き
2024年、アメリカでは ドナルド・トランプ氏の再選が現実味を帯びている。
彼は、「グローバリズムがアメリカの労働者を苦しめてきた」と主張し、モンペルラン協会が推進してきた新自由主義に真っ向から対立する姿勢を見せている。
トランプ氏の主張:
✅ 「グローバリゼーションは金融エリートを豊かにし、労働者を貧困にした」
✅ 「私はウォールストリートのためではなく、一般市民のために戦う」
✅ 「アメリカの産業を取り戻し、中間層を守る」
トランプ再選が実現すれば、 モンペルラン協会が支配してきた経済政策に変化が訪れる可能性がある。
まとめ:新自由主義の終焉と次の時代
モンペルラン協会は、 「自由市場」という名のもとに、企業と富裕層に有利な経済政策を推進してきた。
しかし、その結果、世界中で 貧富の格差が拡大し、多くの労働者が生活苦に陥る事態となった。
現在、新自由主義に対する反発が世界的に広がりつつある。トランプ再選を含め、今後の動向によっては、 新しい経済モデルへの転換が求められる可能性が高い。
この歴史の転換点で、私たちは 真実を見極め、未来の経済を考える必要がある。