「なぜ人は商品を買うのか?」
「売れる商品と売れない商品の違いは何か?」
マーケティングにおいて、「脳科学」 の視点を活用することで、人間の購買行動をより深く理解し、効果的な販売戦略を立てることができます。
本記事では、購買行動に強い影響を与える「脳の正体」 や、売れるマーケティングに必要な6つの刺激について解説します。
人が購買行動を起こす際に影響を受ける脳の正体とは?
購買行動において特に大きな影響を与えるのが 「原始脳」(爬虫類脳)です。
原始脳とは?
- 脳の最も原始的な部分(脳幹)にあり、反射的な行動を司る
- 「本能的な判断」や「瞬間的な意思決定」 に関与する
- 購買行動の多くは、この原始脳が判断している
購買を決定する際、多くの人は「論理的に判断している」と思いがちですが、実は 「理性(大脳新皮質)」よりも「本能(原始脳)」の影響が圧倒的に強い」 のです。
この原始脳を刺激することで、人は「買いたい!」という気持ちになりやすくなります。
売れるマーケティングのための6つの刺激とは?
購買行動を促すためには、原始脳に強く訴えかける刺激 を与えることが重要です。
1. 視覚的な刺激(ビジュアル)
- 人間は視覚情報を優先して処理する(情報の約80%は視覚から得る)
- 鮮やかな色・目立つデザイン・シンプルな構成 で訴求力を高める
- 例:「高級感のあるパッケージ」「人の顔を使った広告」
2. 個人に関わる刺激(自分ごと化)
- 消費者が「自分に関係がある」と思うと、行動を起こしやすくなる
- 例:「あなたにピッタリの商品です」「この商品であなたの人生が変わる!」
🔹実例:ビル・ゲイツのTEDプレゼン
- マラリア撲滅の講演で、実際に蚊を入れた瓶を開けて、観客に「危機感」を持たせた
- 「他人ごと」ではなく「自分ごと」に変えることで、強いインパクトを与える
3. 記憶に残る刺激(繰り返し)
- 「単純接触効果」(何度も接触するほど好意を持ちやすくなる)
- 重要なメッセージは3回以上繰り返すと定着しやすい
- 例:「この商品が選ばれる3つの理由」「お客様満足度No.1!」
4. 具体的な刺激(親しみのあるもの)
- すでに知っているものを使うと、理解しやすく受け入れられやすい
- 例:「ドラゴンボールのキャラ名(ブルマ・フリーザ)」は既存の言葉を活用している
- 「あなたの毎日の習慣にプラスするだけ!」のように日常に馴染ませる
5. 比較できる刺激(対比効果)
- 比較対象を提示すると、選択しやすくなる
- 例:「通常価格 10,000円 → 期間限定 7,800円!」
- ビフォー・アフターの写真を使う(ライザップの広告が代表例)
6. 感情を動かす刺激(感情マーケティング)
- 感情が動くと、脳は強く反応する
- 例:「感動ストーリーCM」「衝撃映像を使った社会問題の訴え」
- 購入時の「ワクワク」「安心感」「不安」を刺激することで購買意欲を高める
マーケティング実験から学ぶ「売れる手法」
1. 硬い椅子 vs. 柔らかい椅子(体感による影響)
- 硬い椅子に座った人は、28%安い車を選んだ
- 「快適さ」が購買行動に影響を与える
2. ワインのラベル効果(見た目の影響)
- 同じワインでも「高級ラベル」が貼られている方が「美味しい」と評価される
- 視覚的な先入観が味覚にまで影響を与える
3. BGMが購買行動に与える影響
- フランスの音楽を流すとフランスワインが売れ、ドイツの音楽を流すとドイツワインが売れる
- 環境の演出が、消費者の選択を無意識に誘導する
4. エコノミストの購読プラン(選択肢の影響)
- 「3つの選択肢」を用意すると、一番高額なプランの購入率が上がる
- 2択よりも、3択の方が「お得感」が強くなる
エコノミストの購読プランの例
3つの選択肢が購買行動に与える影響
エコノミスト誌の購読プランの実験では、次の3つの選択肢が用意されました。
- ウェブ版のみ($59)
- 印刷版のみ($125)
- ウェブ版+印刷版のセット($125)
この3択を提示すると、圧倒的に 3番(ウェブ版+印刷版のセット)が選ばれる 結果になりました。
なぜでしょうか?
おとり効果(デコイ効果)の影響
「おとり効果(デコイ効果)」とは、人の選択を特定の方向へ誘導する心理学的手法です。
このケースでは 2番(印刷版のみ $125) が「おとり(デコイ)」として機能しました。
- 2番(印刷版のみ)は 3番(ウェブ+印刷版)の劣化版 に見える
- 「同じ価格なら3番の方が得!」と感じさせることで、3番が選ばれやすくなる
- 結果的に、より高額な商品(3番)を選ぶ人が増える
2択にした場合の脳の反応
次に、この 「おとり」 を取り除き、以下の 2択 のみを提示しました。
- ウェブ版のみ($59)
- ウェブ版+印刷版($125)
すると、今度は ウェブ版のみ($59)を選ぶ人が増えた のです。
この結果が示すのは、人間の脳は「相対的な比較」によって価値を判断する ということ。
- 3択のときは 「125ドル払うなら、より価値がある方(ウェブ+印刷)を選ぼう!」 となる
- 2択のときは 「安い方(ウェブ版のみ)でいいや」 となる
つまり、選択肢を増やすことで購買行動をコントロールできる ということです。
まとめ
✅ 購買行動は「理性」ではなく「本能(原始脳)」で決まる!
✅ 「おとり効果(デコイ効果)」を活用すると、高価格の商品が売れやすくなる
✅ 選択肢の作り方で、消費者の意思決定を操作できる
マーケティングに脳科学を取り入れることで、売れる戦略を構築できます!