ニーチェの「超人」になるための道とは?無への意志と精神の三段階を徹底解説[ニーチェ・ツァラトゥストラ⑥]

ニーチェの「精神の三段階の変化」(ラクダ、ライオン、幼子) 心理学・哲学

ニーチェの哲学において、「超人(Übermensch)」は単なる強者ではなく、新たな価値を創造し続ける存在を指します。しかし、人間が超人へと至るためには、「無への意志」を乗り越え、精神の変革を遂げることが必要だとニーチェは述べています。

本記事では、まず「無への意志」とは何かを解説し、それを乗り越えるための「精神の三段階」について詳しく説明します。そして、この三段階を日本の伝統的な考え方である「守破離(しゅはり)」に置き換えて説明し、現代社会における「超人」への道を考察していきます。


「無への意志」とは?ニヒリズムの奥にある最大の問題

1. 最高価値を立てること自体が誤り?

前回の記事で、ニーチェは「神は死んだ」と述べ、従来の価値観が崩壊し、人々が目標を失う(ニヒリズム)ことを説明しました。

しかし、ニーチェはさらに深く掘り下げ、こう主張します。
「そもそも、人はなぜ最高価値を求めるのか? それ自体が誤りではないのか?」

最高価値を求めるとは、

  • 「これこそが絶対的に正しい!」と信じる基準を作ること
  • 「この価値があれば人生は揺るがない」とすること

しかし、ニーチェはこれが 「人間の創造的な力を封じ込めてしまう危険性がある」と指摘しました。


2. 「無への意志」とは? 安楽を求める心の正体

ニーチェは、人間が「最高価値」を求める背景には、「安楽状態を求める欲望」があると考えました。

  • 「最高価値があれば、もう悩まずに済む」
  • 「何が正しいか迷わずに済む」
  • 「最終的に救われるから、何も考えなくてもいい」

このような思考の背後には、「何もせずに、ただ楽になりたい」という欲望があります。

ニーチェはこれを「無への意志(der Wille zum Nichts)」と呼びました。


「超人」になるための道:精神の三段階の変化

「無への意志」を乗り越え、超人になるためには、精神の三段階の変化が必要です。これは『ツァラトゥストラはこう語った』に登場する有名な概念です。


第一段階:「ラクダ」— 忍耐と自己犠牲の精神(=守)

ラクダの象徴するもの:

  • 苦難を背負い、耐え忍ぶ精神
  • 社会のルールや伝統に従い、自己を抑える生き方
  • 「重荷を担うことが美徳」と考える価値観

🔹 :「会社や社会のルールに従う」「親の期待に応える」「周囲の価値観を受け入れる」

この段階は、日本の武道や芸道における「守(しゅ)」の段階に当たります。

守とは?

  • 師匠や伝統の教えを忠実に守ること
  • 基本を身につけ、既存の価値観を受け入れること

🔹 守の例:「師の教えを信じて従う」「組織のルールを守る」「伝統を学ぶ」

➡ しかし、この段階ではまだ自由ではない。超人へ進むには「破」の段階へ移行しなければならない。


第二段階:「ライオン」— 反抗と自己主張の精神(=破)

ライオンの象徴するもの:

  • 既存の価値観と戦い、「私はこうする!」と自己主張する精神
  • 「常識」「伝統」「社会のルール」に対して疑問を持ち、戦いを挑む
  • 強い意志を持ち、自分の道を切り開こうとする

🔹 :「親の言うことを疑い、自分の人生を選ぶ」「社会のルールに疑問を持ち、新たな挑戦をする」

これは、「破(は)」の段階に相当します。

破とは?

  • 師の教えや伝統を疑い、新しい視点を持つこと
  • 自分の道を模索し、既存の枠を超えようとすること

🔹 破の例:「伝統の型を崩し、自分のスタイルを模索する」「社会のルールに疑問を持ち、新たな挑戦をする」

➡ しかし、反抗するだけでは自由になれない。最終的には「創造」へと進む必要がある(離の段階)。


第三段階:「幼子」— 創造と自由の精神(=離)

幼子の象徴するもの:

  • 自由で純粋な創造の精神
  • 自分自身の価値を自ら生み出す力
  • ルールや常識に縛られず、無邪気に「新しい価値」を生み出す存在

🔹 :「好きなことに没頭する」「夢中で何かを創り出す」「自分らしい生き方をする」

これは、「離(り)」の段階に相当します。

離とは?

  • 伝統や過去の価値観から自由になり、自分自身の道を切り開くこと
  • 完全に独自の表現や価値観を持つこと

🔹 離の例:「完全に独自のスタイルを確立する」「新たな価値観を創造する」


まとめ:「無への意志」を超えて、創造の道へ

①「無への意志」とは?

→ 人間が「最高価値」を求めるのは、実は「安楽」を求めているから。

② 超人になるための精神の三段階(守破離)

  1. ラクダ(守) → ルールに従い、重荷を背負う段階
  2. ライオン(破) → 既存の価値観を否定し、「私はこうする!」と宣言する段階
  3. 幼子(離) → 新たな価値を生み出し、自由に生きる段階

👉 あなたは、どの段階にいるか?

ニーチェの「超人」への道は、他者や社会に流されず、自らの価値を創造する生き方を示しています。

私たちもまた、ラクダ(守)を脱し、ライオン(破)として戦い、最終的に幼子(離)のように自由に創造する存在を目指すべきなのです。

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