2026年10月に予定されている消費税インボイス制度の改正により、事業者の負担が大幅に増加します。特に、免税事業者は「取引排除のリスク」や「課税事業者への移行による負担増」に直面する可能性が高まっています。本記事では、経過措置の変更、2割特例の廃止、インボイス制度の今後について詳しく解説します。
2026年10月のインボイス改正で何が変わるのか?
現在、免税事業者との取引に関しては「経過措置」として80%の仕入税額控除が認められています。しかし、2026年10月以降は50%に縮小され、2029年には完全に撤廃される予定です。
変更点①:経過措置の縮小(80%→50%)
- 2026年9月まで:免税事業者との取引において、仕入税額控除の80%が認められる
- 2026年10月以降:仕入税額控除が50%に縮小され、事業者の負担が増加
- 2029年以降:経過措置が完全撤廃され、免税事業者との取引では仕入税額控除が適用されなくなる
この改正により、取引先の負担が増えるため、免税事業者が取引を切られるリスクが高まると予想されています。
変更点②:2割特例の廃止
「2割特例」とは、免税事業者から課税事業者になった人が、売上の2割だけを消費税として納めればよいという制度です。しかし、これも2026年9月で終了します。
2割特例のメリット
- 経費のインボイス管理が不要
- 消費税の納税額が少なく済む
しかし、この制度が終了すると、課税事業者になった場合の納税額が大幅に増加し、特に小規模なフリーランスや個人事業主への影響が大きくなります。
免税事業者への影響と取引排除リスク
① 取引先がインボイス登録を求めるケースが増加
経過措置の縮小により、免税事業者と取引する企業の負担が増えるため、「インボイス登録しないなら取引停止」という動きが強まると予想されます。
② 価格交渉力の低下
インボイス未登録の事業者は、取引先に消費税分の負担を求めにくくなり、報酬の引き下げ圧力が強まる可能性があります。
③ インボイス登録による負担増
免税事業者がインボイス登録すると、消費税の納税義務が発生するため、実質的な税負担の増加につながります。
インボイス廃止論の行方
現在、インボイス制度の廃止を求める声が高まっており、野党や中小事業者の間で廃止論が活発化しています。
① 埼玉県議会で自民党が「インボイス廃止」を可決
2024年12月、埼玉県議会では自民党がインボイス廃止の意見書を可決しました。しかし、政府や財務省はインボイス制度の継続に積極的であり、現時点で廃止に向けた動きは見られません。
② インボイス制度の目的
政府がインボイス制度を推進する主な理由は以下の3点です。
- 税収の安定確保(免税事業者からも実質的な税収を確保するための「ステルス増税」)
- 税務調査の簡易化(インボイスの有無で経費の判断が容易になる)
- デジタルインボイスの推進(国際的な電子インボイス基準「Peppol」への対応)
このため、インボイス制度は単なる税制改正ではなく、デジタル化の一環としても進められており、政府が簡単に廃止する可能性は低いと考えられます。
今後の対応策
① インボイス登録を検討する
- 取引先がインボイスを求める場合、登録を検討する必要があります。
- ただし、課税事業者になると消費税の納税義務が発生するため、慎重に判断することが重要です。
② 価格交渉を行う
- 免税事業者として取引を継続する場合、消費税分の負担を価格に転嫁できるか交渉する。
③ 会計処理の見直し
- インボイス登録をしない場合でも、取引先の対応次第で報酬が減る可能性があるため、事業のコスト管理を強化する。
④ 今後の法改正の動向を注視する
- 2025年7月の参議院選挙の結果次第では、インボイス制度の見直しが進む可能性もあるため、政治の動きに注目する。
まとめ
- 2026年10月からインボイス経過措置が80%→50%に縮小され、2029年には完全撤廃
- 2割特例も2026年9月で廃止され、課税事業者への負担が増加
- 免税事業者は取引排除や価格交渉力の低下のリスクに直面
- インボイス制度の廃止論は高まっているが、政府は継続の姿勢
- 2025年の参議院選挙などの動向次第では見直しの可能性も
2026年のインボイス改正は、事業者にとって大きな転換点となります。特に、免税事業者の方は今後の動きを注視し、早めの対応を検討することが重要です。