人間の思考は合理的だと思われがちですが、実は驚くほど直感的で誤った判断をしやすいと言われています。その理由を解き明かしたのが、心理学者 ダニエル・カーネマン の著書『ファスト&スロー』です。
本記事では、カーネマンが提唱した「速い思考(システム1)と遅い思考(システム2)」の違いや、私たちが陥りがちな 認知バイアス について詳しく解説します。
速い思考(システム1)と遅い思考(システム2)の違い
ダニエル・カーネマンは、人間の思考には 「速い思考(システム1)」と「遅い思考(システム2)」の2種類がある と述べています。
速い思考(システム1)とは?
- 直感的で素早い判断をする
- 過去の経験や感情に基づく
- 努力や集中力をほとんど使わない
- 誤った判断をしやすい
例:
- 知っている道を運転する時、無意識にハンドルを操作する
- 誰かの表情を見て「この人は怒っている」と即座に判断する
遅い思考(システム2)とは?
- 論理的で慎重な思考
- 集中力とエネルギーが必要
- 正確な判断をしやすい
例:
- 255×460の計算をするとき
- 初めて行く場所の道順を考えるとき
ポイント: 私たちは 速い思考を好み、遅い思考を避ける 傾向にあります。しかし、そのせいで思考の罠に陥りやすくなってしまうのです。
速い思考に頼ると陥る認知バイアスの罠
速い思考には、様々な 認知バイアス(思考の偏り) があります。これに引っかかると、間違った判断をしてしまうことがあります。
① ハロー効果
「1つの良い特徴があると、他の面も優れていると思い込む現象」
例:
- 容姿が良い人は仕事もできると思い込む
- 人気YouTuberが作った商品なら、きっと良いものだと決めつける
② 確証バイアス
「自分の意見を肯定する情報ばかり集め、反対意見を無視する現象」
例:
- 血液型占いを信じている人が、「A型は几帳面だ」と感じたエピソードだけを集める
- 政治的なニュースで、自分の意見と合う情報しか目に入らない
③ 損失回避
「利益よりも損失を過剰に恐れる心理」
例:
- 1万円もらえる嬉しさよりも、1万円失う怖さの方が2倍強い
- 保険に加入する人が多いのは、「何かあったときの損失」が怖いから
このように、速い思考に頼りすぎると、知らないうちにバイアスに騙される ことになります。
バカにならないためにできること
カーネマンは、「バカにならないためには、バカな自分を認識することが大切だ」と述べています。
遅い思考を活用する習慣
- 判断を下す前に、一度立ち止まる
- 「これは本当に正しいのか?」と考えるクセをつける
- 情報を精査する
- SNSやニュースを鵜呑みにせず、複数の情報源をチェックする
- スマホを手放し、じっくり考える時間を作る
- お風呂の時間や寝る前に、1日を振り返る時間を持つ
FAQ
Q1. 速い思考は悪いものなのですか?
A. いいえ、速い思考は日常生活でとても役立ちます。ただし、適切な場面で遅い思考を使わないと、誤った判断をしてしまう可能性がある ため、使い分けが重要です。
Q2. 認知バイアスをなくすことはできますか?
A. 完全になくすことはできませんが、「自分はバイアスに騙される可能性がある」と自覚すること で、冷静に考えられるようになります。
Q3. どうすれば論理的思考を鍛えられますか?
A. 「本当にそうなのか?」と疑問を持つ習慣をつけること が大切です。情報を鵜呑みにせず、自分で調べて考えるようにしましょう。
まとめ
ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』によると、人間の思考には「速い思考」と「遅い思考」があります。私たちは無意識のうちに速い思考を多用し、認知バイアスの罠にはまりやすい ことが分かっています。
バカにならないためには、「自分の思考のクセを知り、適切に使い分けること」 が重要です。一度立ち止まり、遅い思考を意識的に使う習慣を身につけてみましょう!

